勘違い芸人

ずいぶん昔の話ですが、ある新人お笑いコンビの一人がテレビでこんなことを言っていました。

「師匠が二人で一万やていわはって小遣いくれたんですけど、相方が聞きつけて、『俺のぶん、五千円、はよよこせや』とうるさいんです。ほんま、こまかいやっちゃ」

一見なんの変哲もない話ですが、私はこれを聞いて他人事ながら腹が立ちました。なぜか。

相方が「ええがな、ええがな、五千円ぐらい。お前が全部もろうとき」というのなら何の問題もありません。しかし、あわよくば一万円まる取りしようとした側が「五千円ぐらいでこまかいやっちゃ」と言うのはおかしいと思うからです。

例えばの話です。タクシーの運賃が五千円であったとします。あなたが運転手に一万円札を渡して、「お釣りはとっといて」と言うなら、豪気な人だなで済みます。しかし、一円も払わずに立ち去ろうとしたら警察に突き出されても文句は言えません。同じ五千円でも前者と後者では意味が異なります。

もう少し一般化して言えば、自分の他人に対する債権をどう処分しようと勝手だが、他人の自分に対する債権はあなたの意思でどうこうできるものではない、ということです。

払うべき金を払わずにおいて豪傑ぶるなど以ての外です。

まあ、自分に甘い小人物ぶりを世間に笑ってもらおうとしたのだと思いますが、子供の時分に段ボールごと商品を盗んだと得意気に話した女優と同じで、笑えない話です。

件の芸人はその後全く見かけなくなりました。

有り難くない知らせ

思いがけぬものに当選してしまいました。

先日我が家に1枚の葉書が舞い込み、取り上げてみると差出人は「アリス・グループ・ジャパン株式会社」となっています。心当たりがないので捨てようとしましたが、ふと裏をみると「ACアダプターの一部が加熱変形するおそれ云々」とあります。

アリス・グループがモトローラ・モビリティ・ホーム事業部を買収したのだそうで、モトローラブランドのACアダプタの無償交換を行っているとのこと。

ACアダプタ無償交換

あー、これはちゃんと確認しておいた方がよさそうだと、問題のACアダプタを見てみると、番号は 1029 となっています。ビンゴです……。

葉書に書かれているフリーダイヤルに電話すると、「新しいACアダプタを送るので、問題のACアダプタは宅急便で送り返して下さい」と言われました。無論、費用は向こう持ちですが。

古いやつは当方で廃棄、という流れかと思っていたので、送り返せとの指示には少々面食らいました。恐らく、危険なACアダプタを可能な限り回収したいということなのでしょう。

面倒ですが仕方ありませんね。

洗えるスーツってダメなの?

PRESIDENT の「洗えるスーツは問題外」との記事が話題になっています。

自宅で気軽に洗える素材のスーツが上質なわけがありませんし、自分の都合を最優先にした装いで現れる相手と真剣なビジネスをしたいと思えるでしょうか。

実際どうなんでしょうね。そんなに見るからに安っぽいのでしょうか。試したことがないので分かりません。

ただ一つ言えるのは、「問題外」というけど、それこそ自分の都合では? ということです。だって、書いているのは「パーソナルスタイリスト」なわけですから。そりゃ皆が皆洗えるスーツに流れては困るでしょう。

記事によればスーツの価格は「中間管理職・部長は10万~25万、経営者・役員クラスは25万が目安」とのことです。ここまでスノビッシュだと逆に清々しいですね。

よく馬子にも衣装と言うし、英語の諺にも”Fine feathers make fine birds.”というのがあります。美しい羽根は美しい鳥を作る、という意味です。

なるほど、高級スーツに身を包めば誰でもそれなりに見えるかもしれませんが、それも黙って座っていればの話です。ひとたび口を開けば、その人の知性、教養の程から器の大小まで忽ち相手に伝わってしまいます。

いや、黙っていても貧乏揺すりをしていれば一発です(笑)

大事なのは中身というと余りに月並みですが、本当のことです。分不相応な美服は却って人の侮りを招きます。

流言、デマ、etc.

皆さんは、流言蜚語の「蜚」とはどういう意味かご存じでしょうか。手元の漢和辞典によると……

《音読み》

《訓読み》
とぶ
《意味》

  1. {名}虫の名。羽があってとび、台所などにすんで、悪臭を発する。あぶらむし。ごきぶり。
  2. {動}とぶ。空をとぶ。〈同義語〉→飛。「蜚鳥ヒチョウ(=飛鳥)」「三年不蜚、蜚将沖天=三年蜚バズ、蜚ベバマサニ天ニ沖セントス」〔→史記〕

なんとゴキブリのことなんですね。

現在では「流言飛語」のように「飛」の字を当てるのが一般的ですが、「蜚」の方がでたらめな噂がカサコソとゴキブリのように広がるさまが思い浮かべられて、不快なニュアンスが良く伝わる気がします。

もっとも、別の辞書(広辞苑第6版)によれば「蜚」は「バッタ・イナゴ」の意味もあるそうで、流言蜚語はむしろイナゴの大発生をイメージして作られた熟語かもしれません。

どっちにしろ、背筋にぞわっとくる言葉ですね。

ついでに、「デマ」とか「風説」といった、似た言葉についても考えてみました。

流言蜚語

信憑性というのは真実かそうでないかという意味ではなく、本当っぽいかどうかという意味です。「っぽさ」に力点があります。

「風聞」は風の噂に伝え聞いたという意味で、悪意は感じられません。「風評」は風評被害という言い方に代表されるように、ややネガティブな印象です。

流言蜚語も風評に近いですが、誰かが故意に噂を流しているニュアンスです。風説もそうですね。

デマまでいくと、完全に悪意があります。

我々はともすると、「昔の人は噂に左右されたかもしれないが、現代人は情報を適切に判断できる」とうぬぼれがちです。しかし、本当にそうでしょうか。

ITの進歩によって、却ってデマに対する脆弱性は増しているようにも見えます。ちょっとググって出てきたことを鵜呑みにする人があまりに多い。ですが、実はGoogleも案外いい加減なものです。

情報の洪水に翻弄されることなく、もう少し腰を据えて世の中を眺めなくてはと、自戒を込めて思います。

寒天ゼリー

イオンで寒天ゼリーを見かけました。よくある10個ぐらい小分けにしてあるやつです。

カロリー 3kcal と書いてあるので、「ほう、一つ3kcal か」と思ったら、よく見ると 100g で 3kcal です。内容量は 200g なので、一袋全部食べても 6kcal.  殆ど無視して良い量と言えます。

一方、同じ棚のすぐ近くにある「こんにゃくゼリー」は、表示によれば一つで 25kcal.  12個入りなので全部食べる(そんな人いないでしょうが)と 300kcal となり、カップヌードルに匹敵します。

なぜこんなにも違うのか。表示をよく見ると、前者は人工甘味料を使っているのに比べ、後者は「ぶどう糖果糖液糖」を使っているからのようです。

人工甘味料の健康への悪影響もいろいろ取りざたされていますが、とりあえずダイエットには役に立ちそうです。一袋食べても 6kcal ですからね。

でも、一番良いのは自分で作ることかも知れません。

無糖のコーヒーゼリーなら若干のインスタントコーヒーと粉寒天でできるはず。今度やってみようかな。

「治療」の定義

バイク保険の更新をしようと思って「重要事項」を読むと、面白いことが書いてありました。

最初に「記名被保険者」とか「ノンフリート等級」といった用語の説明があるのですが、その中に「治療」という項目があります。

医師による治療をいいます。ただし、被保険者が医師である場合は、被保険者以外の医師による治療をいいます。

なるほど。まず、治療とは医師による治療をいうそうです。民間療法などでかかった費用は治療費としては認められないということですね。

その後の段はより一層念が入っています。現実問題として、いくら医師でもバイクで事故っていながら自分で自分を治療するなど不可能でしょうから、「(治療とは)被保険者以外の医師による治療をいう」とは、当たり前のことを書いているだけのようにも見えます。

が、わざわざこのような「定義」を載せているのは、論理的にそうならざるを得ないからではないでしょう。自分で自分の治療をして、お手盛りで「これだけの治療費がかかった」と請求されるのを防ぐのが目的です。

無味乾燥なような契約書類も、見ようによっては案外面白いものです。

錦帯橋、周防大島

岩国の錦帯橋に行ってきました。

錦帯橋

まずは一般的なこのアングル。山の上にお城(岩国城)が見えます。

錦帯橋

下から見ると幾何学的な構造美に感心させられます。

錦帯橋

橋の下からお城を覗くという趣向。向こう岸に桜がたくさん植えられています。満開の季節にはさぞや見事でしょうね。

ついでに近くにある周防大島にも行ってみました。こちらは初めてです。

……と、その前に腹ごしらえです。

ラーメン

この辺の名物である貝汁にしようかとも思ったのですが、お腹が減っていたのでラーメンにしました。スープに魚介の風味があり、なかなかの美味でした。

さて、周防大島です。

ご存じの通り、「大島」と呼ばれる島は全国にいくつもあります。恐らく一番有名なのは伊豆大島でしょうが、瀬戸内地方で大島と言えば、周防大島のことです。(正式には屋代島というそうです)

周防大島

島には橋で行けます。ご覧のように古風なトラス式鉄橋で、車道の他に歩行者用の道もあり、中学生などが自転車で渡っていました。

写真は島側から本土を向いて撮ったものです。

地下通路

このように橋を通る道と交差して地下通路が作られています。横断歩道などでこの道が渋滞すると橋の上が車でいっぱいになってしまうからでしょう。

周防大島付近

こちらは本土側。のどかな漁村の雰囲気です。

瀬戸内の穏やかな海が印象的でした。

詐欺メールの巧妙化

アホな詐欺メールを嘲笑する記事を何度も書きましたが、最近は笑ってばかりもいられません。彼らの手口も巧妙化してきています。

そもそもDNSを逆引きできないIPからのメールは弾いている上に、ベイジアンフィルタも稼働中で、さらに独自のNGワードも設定しています。それらをかいくぐって辿り着くのですから大したものです。悪い意味で。

ここ数日ウチによく来るのは「緊急地震速報」と称するもので、うっかり開いてしまいそうになります。他にも、「エボラ出血熱に関する情報」というのもあります。

一番小癪なのは「放射能汚染警報」なるもので、「お住まいの地域で放射線が多量計測されています。」などと書かれています。

いずれも、世間の耳目を集める事柄を「エサ」にしているあたり、非常に巧妙です。人間が一番関心を持つのは金銭と異性でしょうが、この二つを利用した詐欺、「儲かります!」「モテます!」はさすがに使い古された観があります。

その点、エボラ出血熱は時事性があり、また恐怖心を引き起こすので引っかけやすいのでしょう。「犯人」は単独か複数か、また国籍はどこかといったことは分かりませんが、日本の事情に精通した人物のように思われます。

皆様もくれぐれもご注意下さい。

護憲派と改憲派に言いたいこと

物事を全か無かでしか考えられない人がいます。彼の考えに何か一つでも不同意だと、ウヨクだとかアカだとか勝手に決めつけられてしまう。誰しもそんな人の一人か二人は心当たりがあるはずです。

先日、「誇るべきは憲法9条ではなく21条」と書きました。

これは実は少々危険なことで、「憲法9条の価値を認めないのですか! あなたは日本が戦争をしても良いと言うのですか!」とヒステリックに詰め寄られる恐れがあります。

逆の立場から、「何条だか知らないが、米国から押しつけられた憲法を誇るだと? 貴様、サヨクだな!」とよく読まずに批判する人もいるでしょう。

どちらも思想は逆ですが同じタイプです。全く困った人達です。

護憲派に言いたいのは、憲法とは言え金科玉条ではないということです。憲法自身がその手続きを定めている通り、改正は可能です。「改正すべきではない」というのは一つの意見ですが、絶対ではありません。

改憲派にも言いたいことがあります。「押しつけ憲法」だから変えるべきというのは不合理な考え方です。どんな法も、「みんなで話し合って全員合意した上で成立」というわけにはいかないのです。どこかの誰かが起草したものを受け入れるか、受け入れないかしか選択肢はありません。

無論、草案の作成に国民の声が反映しているに越したことはなく、現在の日本国憲法がそうでなかったのは残念なことです。しかし、だからといって無効だとか廃棄すべきだというのは暴論というものです。

現憲法は我が国初の20歳以上の男女による衆議院選挙で選ばれた代表者達によって圧倒的多数で可決されているのです。

私は、現憲法を民主的な方法で定められた最高法規であると認め、尊重します。