十年ちょっと前まで、インターネット上には賑わっている「掲示板(BBS)」がいくつもありました。BBS(Bulletin Board System)は主に日本で使われた用語で、海外ではForumなどと呼ばれていました。
ブログの普及によって、それらはすっかり廃れてしまったのはみなさんご承知の通りです。残っているのは「2ちゃんねる」くらいですが、あれは匿名というより「名無し」を基本としていて、私がここで語りたい「掲示板」とは少し違います。
どう違うかというと、ニックネーム(ハンドル)さえ使わない「名無し」による発言は、完全にその場限りのコミュニケーションであるということです。
2ちゃんねる以外の掲示板では、大抵古株のユーザーが幅を利かせていて、彼らに睨まれるとその場に居づらくなったものでした。古株の発言力は強く、なにやら思い上がったような態度の者もしばしば見受けられました。
こう書くと弊害ばかりだったようですが、中には高い見識を誇る「論客」も居ました。時折発生する論争は、揚げ足取りに終始しがちな名無し同士のそれと異なり、各人とも自分のことを論客と自負するだけに、見応えがありました。
ブログのコメント欄が似ていますが、ブログに於いてはあくまで開設者が主で、意に添わないコメントは承認しないということが考えられますし、そうでなくても、本文でたっぷり自説を開陳できるブログ主と、コメントだけする人とではどうしても力関係に差が生じてしまいます。
コメント欄を持たないブログも増えてきており、どうも世の中は論じ合わない方向、閉じたSNSの中で、なあなあでやっていく方向へと向かっているようです。残念なことです。