十数年前、インターネットが普及し始めた頃の話です。テレビで、捕まった性犯罪者が数万枚のわいせつ画像を所持していたと報道しているのを聞いて、父が「とんだ変態も居たものだな」と呆れかえっていました。実家にいて一緒に見ていた私は「別に変態というほどでも……」と言いかけて、すぐにやめたのを覚えています。
と言うのも、私も何万とはいかないまでもPCの中にかなりの数のエロ画像を持っていたからです。若かったですし。
たぶん、物理的な写真、エロ本のたぐいなら何千、何万枚も集めるバカはまずいないはずです(たまにいるけど)。隠す場所がないですからね。しかし、PCのハードディスクの中ではどれだけ集めても容積は変わらないので、スペースの欠如は歯止めにはなりません。仮に数台の外付けハードディスクをつないでも、紙に比べれば占領する場所は僅かです。
それどころか、オンラインストレージを使えば必要なスペースはまさしくゼロです。しかも、あなたの家が火事になっても大切なエロ画像は守られます(笑)
ただ、3歳か4歳だかの自分の子供の写真をオンラインストレージに入れておいたら、児童ポルノと見なされてアカウントを消されてしまったという話もあります。このような「企業による検閲」の問題はまた別の機会に語ろうかと思います。
データストレージのコスト
テクノロジーの進歩によってデータストレージのコストが恐るべき速さで低廉化しています。行きがかり上エロ画像で話を進めますが、画像なんて今となっては軽いコンテンツで、圧縮されていれば通常数百キロバイト、多くとも1メガバイト程度です。
残りの人生を長めに見積もってあと60年生きるとしても、365 * 60 = 21,900 (日)
頑張って毎日100枚、60年間欠かさず見ても2.2テラバイト。外付けハードディスク一台に入ります。値段にして一万円以下です。
ましてや、文字データともなるとさらに軽いので、膨大な量を保存できます。あなたのPCのハードディスク容量を仮に1テラバイトとすると、約5,000億文字、岩波新書にして7億9,000万ページ分のデータが入ります。
これを先ほどの人生の残り日数で割ってみると、790,000,000 / 21,900 = 36,073.059(ページ)
一日約36,000ページ。新書100冊分以上読まなくてはなりません。60年間、毎日。つまり、不可能ということです。
データはいくらでも保存できるが人生は限られている
ありきたりな記事だと、ここで「情報の洪水に飲み込まれぬよう、取捨選択していかなければならない」といった結論で終わるところですが、私は必ずしもそうは思いません。
情報の洪水に翻弄されるのも悪くはないではありませんか。データは、ため込めるだけため込めば良いのです。どうせコストは下がり続けているのだから。
それに、コンテンツの飽和は今に始まったことではありません。ちょっとした都市の図書館なら蔵書が100万冊はあります。21,900日で割ると45冊強。テクノロジーの進歩以前に、全部の本や映画や音楽を読み尽くし、見尽くし、聞き尽くすのはどだい無理なのです。
だから、玉も石もまぜこぜにため込んで、目についたものだけを拾い上げるしかありません。
むしろ、必要なのは残りの人生は思ったより短いという認識の方です。