時代とともにわいせつの観念は変わる

漫画家・美術家のろくでなし子さんが、自身の性器の3Dデータを頒布したとして、わいせつ物頒布等の罪等の疑いで逮捕されました。

逮捕は突然で、ろくでなし子さんは「私にとって手足と一緒と思っている。データがわいせつとは思わない」と釈放後の記者会見で語ったそうです。

確かに、何をもって「わいせつ」とするかは曖昧です。判例はわいせつとは「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する」ものとしていますが、この定義も到底具体的とは言えません。

1950年代に行われた「チャタレイ裁判」では、文芸すなわち文章がわいせつとされました。裁判所は現在もこの考え(文章もわいせつ物たりえる)を維持していると思われますが、実際上、現在ではどんなに卑猥な文を書こうと摘発されることはありません。時代とともにわいせつの観念は変わります。

では、現在ではどういうものが「わいせつ」なのか。警察も裁判所も基準を教えてくれませんから確定的なことは言えませんが、近年摘発された例を観察して推測することはできます。

要するに「局部の露出があるかないか」です。

実に即物的で情けなくなるような基準ですが、刑法の謙抑性に鑑みれば、「これも見ようによっては卑猥だよね」などと、わいせつの観念がむやみに広がることは避けねばならず、そのためには露出のあり・なしが一番明確なのです。

ろくでなし子さんのデータは局部そのものですから警察としては文句なくわいせつ物に当たると考えたわけです。

逮捕に至ったもう一つの理由は、3Dプリンタ用のデータをわいせつ物として摘発する前例を作りたかったということでしょう。

実はハードディスクに蔵置する2Dのデータも、当初はわいせつ物に当たるかどうかが争われたことがあります。被告側は「コンピューターで扱うデータは 0 と 1 の羅列であり情報に過ぎないから、わいせつ物たりえない」と言ったんですね。わいせつ物というためには形のある「有体物」である必要があるからなのですが、裁判所は、データをハードディスクという「物」の中に置いて、一定の操作をすればわいせつな画像を表示できるのだから、(そのハードディスクが)わいせつ物だ、としました。

で、今回の3Dデータも、「3Dプリンタで打ち出せばわいせつ物ができるから」、「そのデータを記録したメディアが」、わいせつ物だというわけです。

警察側の理屈はおよそこういったことです。しかし、起訴されるかはまだ分かりませんし、されたとして裁判所がどのような判断を下すかも分かりません。私にはろくでなし子さんの「作品」はわいせつには見えないので、もし裁判官も同じなら無罪の可能性もあります。

ただ、わいせつには見えませんが、ろくでなし子さんが今回の逮捕を女性差別に結びつけようとしていることには違和感を覚えます。警察はそういう差別はしないと思います。試しに誰か男性器の3Dデータを頒布してみればはっきりするのですが。い、いえ、教唆じゃありませんよ(笑)

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