断水と定額給付金とバカヤローと

筆者は以前福岡市に住んでいて、平成6年だったかの福岡市渇水のときには断水を経験しました。もっとも、断水といっても本当に水がなくなったわけではなく、時間帯(夜間)による給水制限です。
当時、不便なのもさることながら、随分市民をバカにした措置だと思ったものです。その気になれば昼間のうちにいくらでも使えるし、貯めることもできるのですから。市民が本当に賢ければ、昼間だろうと夜だろうと必要以上の水を使うことなくきちんと節水するはずで、単純に考えると、わざわざ水道管のバルブを閉めて水を使えなくする意味はないように思えます。しかし、現実には市民はあまり賢くないので、実際に断水で不便な思いをするまでは真剣に節水しないのです。論理的には無意味なはずの給水制限が、なぜか効果を発揮する所以です。実際効果があるのですから、バカにされた、と怒ってみてもしかたありません。

これって何かに似ていますね。
そう、例の定額給付金です。私は定額給付金政策に賛成です。
「自分で納めた税金をそのままもらってもうれしくも何ともない、これは麻生政権の愚策だ」としたり顔で語る人が多いですが、その人たちは皆が皆、そんなに賢いのでしょうか。結局のところ、給付が始まれば受け取るでしょうし、受け取ったなら使うのではないでしょうか。それで目的は達せられるわけです。所謂ケインズ効果です。本当はこんな政策を行わずとも、皆がむやみに財布の紐を締めずに適切な消費をすれば良いだけなんですけどね。上の節水と同じような話ですね。

一番始末におえないのは臆面もなく「定額給付金は貯金します」などと言う人です。この点、節水とは逆で、「消費」が求められているのに、それすら理解していない人。あるいは理解した上で、「でも、貰った以上自分の金だから貯金しようとどうしようと勝手でしょ?」という利己主義者なのかも知れません。もちろん勝手です。ですが、それは夜間断水中なのに水を無駄に使いまくり、「水道料金は払ってるんだから勝手でしょ?」とうそぶく人と同じようなものです。

そもそも、「自分で納めた税金を貰ってもうれしくない」というのは平均以上納めていて初めて言えることです。平均以下でも、あるいは納めていなくても貰える定額給付金には、富の再分配の意味もあるわけです。
また、同じ二兆円ならもっと有効なことに使ってほしいという人がいますが、有効なこととは何なのでしょうか。道路でしょうか? 箱モノでしょうか? いずれにしろ、そのような使い方では特定の人が利益を受けるのみです。道路の利便性は万人が享受できる、と言えばその通りかも知れませんが、それはあくまで観念的にそう言えるだけであって、実際には、便利なのは沿線の住人だけです。下手をすると沿線の住人にとっても不要な道路ができてしまって、得をするのは業者だけ、ということになりかねません。
一方、定額給付金ならば、住民登録に基づいて給付され、曲がりなりにも全国民が享受できます。
また、「消費を奨励するのはエコじゃない」などと言う人もいますが、そういう人こそ「消費=物質的浪費」という古い頭が切り替わっていないだけではないでしょうか。非物質的なサービスに対して使えば良いだけの話です。
このように、定額給付金は確かに急場しのぎではありますが、ある程度有効な政策と言えます。それなのに、これほど反対が多いのはまことに理解に苦しむところです。麻生降ろしに躍起になっている一部の野党や、マスコミに乗せられて反対しているのでしょう。
麻生降ろしと言えば、政権発足当初は「解散総選挙をして国民の信を問え」と根拠もなく民主党が主張し、たくさんの人が同調して「解散をしないのは怪しからん」などと言っていましたね。あれこそ、特別給付金などよりはるかに国民をバカにした話です。衆議院の解散権の帰属については諸説ありますが、内閣に属すると考えるのがもっとも合理的であり、通説でもあります。それを、さも国会で求められたら解散しなければならないかのように言っている人には本当に呆れました。それこそバカヤローと罵ってやりたくなるほどです。

奇しくも、明日、2月28日は、かの「バカヤロー解散」の原因となった吉田茂のバカヤロー発言があった日で、「バカヤローの日」だそうです。なぜか、日頃怒っているに対してバカヤローと言って良い日なのだとか。(あくまで、「事」に対してです。「人」に対して言ったら喧嘩になります(笑))

今回はどういうわけか、いつもと違って毒舌風になってしまいました。一日早いバカヤローの日ということで平にご容赦ください。

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