AVG Free の凶悪なダイアログ

先日、AVG が不意にこのようなダイアログを出しました。凶悪な選択肢が並んでいます。

20130928124515

ツールバーをインストール? AVG Nation Search をホームページ、デフォルト検索エンジンに? そんなことを望む人がいるんでしょうか。

ただより高いものはない?

基本的には AVG Free を気に入ってはいるのです。軽いですし。

「無料のアンチウイルスソフトなんて使わないほうがいいよ」とアドバイスしてくれる人もいますが、考えを改めるつもりはありません。不思議でしょうがないのは、彼らが「無料のソフトは性能が低い」と頭から信じていることです。実際に検証したわけでもないのに。

アンチウイルスソフトの評価を行っているドイツの独立機関 AV-TEST によると、AVG Free のウイルス検出率は中の上くらいです。もちろん、このテストで上位だから絶対に安全というわけではありません。上位のものが検出できなかったウイルスを下位のものが検出する例も多々あります。

万一感染した場合の保証についても、無料のものが無保証なのは当然ですが、有料のソフトだって使用許諾契約書に小さな文字で「損害が発生しても一切保証しない」と書いてあるのが普通です。

恐らく AVG の戦略は、無料版を配布することによって一定のシェアを確保し、できるだけ多くの検体を得て検出率を上げることにあると思われます。その恩恵を真っ先に享受するのは有料版のユーザーであるにしても、無料版のパターンファイルもたいしたタイムラグもなしに毎日更新されるので、三方が丸く収まるというわけです。

このようなエコシステムの一部であることに満足していたのですが、それに冷水を浴びせかけたのが冒頭のダイアログです。

有料版を買え、買えと言われるのは我慢もしますが、ブラウザのホームページを変えろなどというのは余計なお世話も良いところです。

AVG に限らず、変なツールバーをインストールさせようとしたり、ブラウザの設定をいじろうとしたりするアプリがよくあります。はっきり言って非常に印象が悪く、逆効果です。よく分からずに入れてしまうのを期待しているのかも知れませんが、そういう人たちは今やスマホやタブレットに流れ、残っているPCユーザーは詳しい人が多いですからね。

沖縄

先日、現地から少し書きましたが、フリープログラマの浅利哲氏と沖縄に行っていました。といっても、別々に出発しての現地集合です。

ホテルより

ホテルは今月開業したとかでとても新しく、なかなか快適でした。不満は少し壁が薄かったことです(笑)

首里城

首里城は改修中でした。

パラセーリング

万座毛ではパラセーリングをやっている人がいました。楽しそうですね。

九月の中旬は二百十日、二百二十日といって、台風が最も多い季節とされています。案の定、台風18号が発生していましたが、私達が居る間の沖縄は概ね晴天に恵まれました。日頃の行いが良いからに違いありません(笑)

Every cloud has a silver lining

沖縄に来ています。今日は13日の金曜日、しかも 仏滅ということで、心なしか飛行機の座席も空いていました。

“Every cloud has a silver lining”という英語のことわざがあります。地上からは灰色に見える雲も、太陽に照らされている側は銀色に輝いている、物事には良い面があるという意味ですね。

雲海

 

ところで二百十日は 秋の季語ですが、五七五にしにくいので「厄日」と言い換えたりします。

俳句

 

いつものパソコンと違って、タブレットでは入力しにくいので今日はこのくらいで。

iTunes カードと他の支払い方法を併用

iTunes カードの残額より高いものを買うと、どのように処理されるかご存じでしょうか。

20130821184252

Appleから届いたメールです。”Store クレジット”とは、要するに iTunes カードです。残額が1,700円の状態で、3,000円のアプリ(「NHK日本語発音アクセント辞典」)を買いました。

ご覧のように、iTunes カードを使い切って、足りない1300円だけがクレジットカードに課金されています。当たり前と言えば当たり前ですが、少し感心しました。

一回の買い物で iTunes カードと他の支払い方法を併用することは可能です。

iTunes カードは以前友人から貰ったものです。ビートルズの写真が印刷されているやつです。10,000円も入っていたので、使い切るのに2年かかりました。しかも、最後は3,000円もするアプリを買うというヤケクソ気味の使い方です(笑)

なぜ(一部)身銭を切ってまで、このアプリ(「NHK日本語発音アクセント辞典」)を買ったかというと、単語の「意味」はネットで容易に知ることが出来るのに、「アクセント」はそうではないからです。

それに、NHKアナウンサーの音声ファイル付きなので、記号では分からないニュアンスも感得できます。英語と違って、日本語の辞書は発音記号までは載っていないものがほとんどです。ましてや、音声ファイルなどまず付いていません。

それだけに、ローカルで日本語のアクセント辞典を所有する意味はあると思います。逆に普通の国語辞典は、ネットで調べれば十分なのであまり必要を感じなくなりました。

悪ふざけ投稿の従業員に損害賠償請求はやりすぎか

飲食店等の従業員が冷蔵庫に入って遊びつつ、その姿をネットにアップロードする事件(?)が相次いでいます。このようなことが頻発する理由の一つは、言い古されている感はありますが、やはり、SNS に対する認識不足でしょう。そして、もう一つ、後で詳しく述べますが、学校教育、とりわけ校則の定め方にも問題があります。

炎上のメカニズム

ネットに上げたら全世界に公開したのと同義、ということを理解していない人はまだまだたくさんいます。特にSNSの場合、自分がフォローしたりされたりしている数十人しか見ていないと誤解しがちです。

実際、いつも見ているのは数十人どころか数人でしょう。ただし、それはあくまで平常時の話です。たった一回のツイートが「炎上」するやいなや過去のツイートまでほじくり返され、大丈夫だと思っていた発言が改めて問題視されます。しかも、文脈から切り離され、人間のクズと決めつけられた上でです。

世の中には暇人がいて、炎上した人の個人情報を調べまくったり、わざわざその人の自宅に行って嫌がらせをする輩までいます。

このような「炎上」のメカニズムについては、荻上チキ氏の『ウェブ炎上 ネット群衆の暴走と可能性』に詳しく載っています。氏の考え方には同意できない点も多々ありますが、歪んだ正義感と群集心理が根底にあるという指摘は的を射ています。

「ブロンコビリーが店舗の閉鎖を発表、店員に対して賠償請求も検討」というニュースについて、ドワンゴの川上会長と目されている @kawango38 さんが

悪ガキのおふざけにお灸を据えるのに、彼の人生を台無しにさせることで世間に責任を果たしたつもりのクソ経営者。 そして他人の不幸を見て悦に入りながら、社会正義を執行した気分にひたる賛同者。

とツイートしたのも、そういった「歪んだ正義感」に対する嫌悪からに違いありません。

他にも、「安い賃金でこき使われているバイトに損害賠償を請求するなんて」とか「いたずらも許されない社会では息が詰まる」という意見が多く聞かれます。

賠償請求は当然

しかし、バイトであることは損害賠償を免れる理由にはなりません。冷蔵庫に入って遊ぶのは業務ではないからです。

従業員の不始末は会社が責任を負うべき、というのはその通りですが、それは業務遂行中のことです。例えばウエイトレスが誤ってコーヒーをこぼし、客の服を汚したとしましょう。客は店にクリーニング代を請求するでしょうし、店は払うでしょう。ウエイトレスが普通に仕事をしていたのなら、店からクリーニング代を求償されることはありません。(使用者責任【民法第715条第1項】は使用者の労働者に対する求償権を妨げるものではない【同第715条第3項】が、労働者が通常求められる注意を尽くしている場合、過失がないとみなされる)

一方、冷蔵庫に入って遊ぶのは業務ではないし、過失どころか故意にやっていることは明らかです。この行為によって店側が損害を被ったのならば、賠償請求は当然です【民法第709条】。

ただ、このように理屈では店は損害賠償請求できますが、実際上はやはり、企業と個人とでは力関係に差がありすぎるということで、使用者の被用者に対する請求権は大幅に制限されるのが普通です。

逆に言えば、件のバイト君が店から幾ら請求されるか(あるいはされないか)分かりませんが、(裁判になれば)認められるのは大した額ではないでしょう。

これは消費者にとって「甘受すべきリスク」ではない

気になるのは「安い労働力を使うことで安く提供しているサービスなのだから、客もそのリスクを甘受すべき」という意見です。「安い飲食店では何を喰わされるか分かったものではない、まともなものが喰いたければ高級な店に行け」というわけです。

こう述べることは自分は高級な人間だと言っているようなもので、気分が良いのでしょう。「安いんだから我慢しろ」論を展開する人は少なくありません。

なるほど、コンビニの店員に一流ホテルのレセプションのような物腰を求めるのは無理があります。しかし、最小限の「誠意」は期待しても良いはずです。

髪を染めていても、鼻にピアスをしていても、言葉遣いがなっていなくても構いません。これらは単なるマナーの問題です。

しかし、冷蔵庫に入って遊ぶのは不法行為です。

過保護な校則のせいで、本当に悪いことが見えにくくなっている

やって良いことと悪いことの区別がつかない人間が増えているのはなぜか。私は学校の教育に問題があると考えています。

語弊を恐れずに言えば、喫煙はやって良いこと、万引きはやってはならないことなのです。

未成年者の喫煙が禁じられているのは、パターナリスティックな理由からです。本来、少なくとも自宅では誰でも自己責任で自由に喫煙して良いのが原則ですが、未成年者は思慮浅薄でタバコの害についてきちんと判断できないとして、保護するために禁じているのです。

一方、万引きは他人の権利(財産権)を侵害する行為であり、犯罪です。自己責任もへったくれもありません。

両者を同じように扱っていることが、日本の学校教育の問題点です。

極言すれば、タバコを吸うことによる害、即ち健康を損ない、お金がかかり、人から嫌われ、生命保険の加入で不利になる、といったことを受け入れるなら未成年でも喫煙して良いのです。バイクに乗ったり、髪を染めたり、ピアスをしたりも同様です。校則では禁じられているかもしれませんが、人として絶対にやってはならないことではありません。

もっと分かりやすく言うと、自分が困るだけのことならやって良い、他人に実害を与えることはやってはいけない、ということです。

この考え方は未成年者には少し高度すぎるのではないか、との懸念は理解できます。実際、「ああ、タバコは吸って良いんだ」「バイクに乗って良いんだ」と早合点する子供もいるでしょう。

だからこそ、辛抱強く「なぜダメなのか」を説明する必要があるのです。「とにかく禁止」では、是非弁別能力が育ちません。

冷蔵庫に入った若者たちは、一様に校則を破って得意になっている子供のような顔をしていました。こういう甘えを育んだのが、「とにかく禁止」式の学校教育です。

「他人の権利を侵害してはいけない、もし侵害すればそれなりの責任を負う」という教育に変えていくべきです。

レーシック、一ヶ月後

7月7日に一ヶ月検診を受けてから、すぐに書こうと思っていたのに、ずいぶん時間が経ってしまいました。

一週間検診で僅かに低下した視力は、両目とも 1.5 に戻っていました。このように視力が安定しない理由は以前書いた通りです。

実はもう一つ、手術後、夜間に車のヘッドライトなどを見ると若干グレアを生じることがあるので、医師に聞いてみました。

なぜグレアが起きる?

eyeball_1eyeball_2

上の図の赤いオーバーレイがレーシックによって矯正された部分です。瞳孔が縮んでいるとき(左図)は良いのですが、広がったとき(右図)、端がはみ出てしまうのですね(図の比率はいい加減)。

矯正された像と、はみ出た部分から来るぼやけた像が二重写しになるのがグレアの原因なのだそうです。

ですが、幸いなことに目は非常に適応性の高い器官なので、数ヶ月もすると瞳孔の端からの光を無視するようになり、グレアは消失するとのことです。

ただし、数ヶ月経っても「絶対にグレアが見えるはず!」と思ってじっと見ているとやはり見えてしまったりするそうなので、まぁ、気にしないのが一番ですね。実際、生活上何ら支障ありませんし。

次は三ヶ月検診

私が行ったクリニックでは、手術の翌日、一週間後、一ヶ月後、そして三ヶ月後という間隔で検診を受けることになっています。ただ、ネットで見かけた話では、翌日及び一週間後はともかく、一ヶ月後の検診には来ない人も多いそうです。視力を測って医師と話すだけですしね。

クリニックとしても、「来なくて良いですよ」とは口が裂けても言えないものの、実は問題がなければ来なくても良い、というか来ない方が余計な仕事(術後の検診は無料)が減って助かる、というのが本音かも知れません。

窓口では「次の検診は9月の中旬ですので、そのころになったら予約して下さい」と言われました。「今」でなく「そのころになったら」というのは、もしかして「もう来なくて良いですよ」という謎かけなのでしょうか(笑)

まぁ、行くつもりですけどね。

LAN-HGW450/S 及び CV 導入

自宅にLAN-HGW450/SというWifiルータとLAN-HGW450/CVという無線コンバータを設置しました。




ルータの方は特に説明の必要はないと思います。無線コンバータというのは、Wifi の電波を受けて有線に変換し、各々の機器と繋ぐものです。有線LANにしか対応していない機器を無線化することができます。

従って、機器が無線LANに対応していれば本来必要ないものです。

ですが、我が家では PlayStation 3 を DLNA クライアントとして使っていて、この PS3、802.11 b/g にしか対応しておらず、たまに映像が乱れることがあったため、11 a/n に対応した LAN-HGW450/CV を導入したのです。ルータも替えたのは、ついでです。

802.11 a/n 対応

11n には2.4GHz 帯を使うものと、 5GHz 帯を使うものがあります。11a は 5GHz 帯のみなので、11 a/n と書いてあれば 11n の方も 5GHz 対応と見て間違いありません。逆に 11 b/g/n と書いてあれば、2.4GHz にしか対応していないという意味です。

2.4GHz 帯の混雑は有名で、ウチのご近所でも様々な SSID がひしめいています。一方、5GHz 帯はまだ新しいこともあり、また、チャンネル数も多いのでかなりすいています。

そういうわけで、11 a/n 対応の環境を構築してみました。

ちなみに、iPhone5 は 5GHz の 11n ですぐに繋がりました。が、Nexus7 は 2.4GHz の 11n でしか繋がりませんでした。実用上問題ありませんが、ちょっと残念ですね。

思わぬ不具合

いまどきの製品らしく、省電力機能もあります。

LAN-HGW450/S 省電力機能

30分刻みで週間スケジュールを組むことも出来るという凝ったものですが、この機能がウチの環境では不具合を招いてしまいました。

省電力モードになると有線LANを低速にするのは良いのですが、リンク速度が変わると CATV モデムが混乱するようで、WAN側の接続が失われてしまうのです。

そこで、有線LANは常時高速とし、ランプをオフにするに留めました。LEDランプの消費電力など本当に微々たるもので、節電には殆ど貢献しないでしょうけどね。

まあ、そこまで省電力にこだわる必要もないように思われます。消費電力は最大でも 15W ですから、24時間フル稼働で1ヶ月で10.8kWh、電気代は250円ほどです。実際にはそれよりずっと少ないでしょう。

論理性を欠くUI

最大の不満は論理性を欠く UI です。管理画面は下のような感じです。

LAN-HGW450/S 管理画面

良く使う機能を大きなボタンにしたかったのは分かりますが、あまり美しい配置とは言えません。

しかも、ボタンを押すと結局左側にサブメニューが現れるので、さして直感的に操作出来るわけでもありません。

ボタンでカテゴリ、例えば節電スケジュールを選び、設定し終えてから別のカテゴリを選ぶには右上の「ホーム」をクリックする必要があります。

ユーザーにそんなまだるっこしいことをさせるより、最初からボタンではなく左側のメニューで大きなカテゴリを選び、右側でサブメニューを選ぶようにすれば良かったのではないでしょうか。あるいは、展開可能なツリーメニューならなお良かったのですが。

ハードウェアは良い

このように、ソフトウェアには不満がありますが、ハードウェアのスペックは申し分ありません。理論上の最大スループットは450Mbps です。ただ、今のところ我が家では 270Mbps(リンク速度)でしか繋がりません。電波状況などに左右されるのでしょう。実効速度は計測していないので分かりませんが、少なくとも一般的な動画を見るには十分です。

型番から分かるように同一メーカー(Logitec)の同時期の製品ですから、条件さえ良ければ450Mbps で繋ぐことも可能なはずです。

日本語の作文技術

実はこうした文章論に類するものを書くことに、私はいささかの躊躇と羞恥をおぼえざるをえない。というのは、私自身が特にすぐれた文章を書いているわけではないし、もちろん「名文家」でもないからだ。

本多勝一「日本語の作文技術」より

当ブログでは、何度か他人の日本語に偉そうにダメ出しをしています(参照)。しかし、では自分の文章に余程の自信があるのかというと全然そんなことはありません。少しでもマシになればと、本多勝一さんの「日本語の作文技術」を読んでみました。



「あなたのメールもレポートもたちまち『名文』になる!」という帯の煽り文句に反して、地味だけどもよく研究された内容です。

例えば、「白い」、「横線の引かれた」、「厚手の」という三つの修飾語がいずれも「紙」という名詞に係っている場合、

白い横線の引かれた厚手の紙

としてしまうと、横線が白いのかと思われてしまうので、

横線が引かれた厚手の白い紙

などとすべき、というような話です。

テンは減らした方が良い

句点を「マル」、読点を「テン」と表記してあるのが印象的です。句点・読点という言葉はイメージしやすいとは言いがたく、私などは「えっと、句点はマルのことだっけ」と一瞬考える必要があります。「マル」、「テン」なら頭にすっと入ってきます。こういう工夫が大事なのでしょう。

で、肝心の句読点の打ち方です。詳しい内容は本を読んで頂くとして、かいつまんで話すと「テンは必要なときにだけ打つべき」なのだそうです。

うれしいです・かなしいです

形容詞の原形に直接「デス」「ダ」を繋げるのは、戦前は間違いとされていました。戦後の国語審議会ではこの用法も許容されるようになりましたが、本書は「軽薄・下品」と断じています。

私の感じ方は少し違って、下品というより「幼稚」ですね。

現在ではむしろ、「うれしゅうございます」「かなしゅうございます」という「正しい」言い方が、「気取った」「バカていねいな」印象を与えることも注意を要すると思います。

このブログでも、ところどころ「うれしいです」「かなしいです」式の言葉を使っていますが、修正の必要は感じません。

著者は左翼

この本は作文の「技術」に的を絞ったものなので、著者個人の思想を云々するのは筋違いかも知れません。しかし、目に余る部分もあります。

戦争犯罪人・岸信介を総理大臣に選んだかなしき日本。

という文には出典がついていないので著者の頭の中から出た文章のはずですが、ここまで酷いといくら例文にすぎないとしても気になってしまって、読み進むのが困難になります。

勝者による戦争裁判自体に大いに疑問がありますが、仮にそれを認めたとしても、岸信介は不起訴になったのであって、戦争犯罪人ではありえません。

まあ、例文はあくまで例文なので気にしなければ良いのですが。

技術を学ぶには良い

「うれしいです」式の言葉を「サボリ敬語」と呼ぶ著者は、しかし、「共通語(いわゆる標準語)として一方的に決められた『東京・山の手』の言葉は、徳川家の出身地の三河系の言葉が江戸時代に武士社会で有閑階級的発達をとげたもので、下町の庶民はあんな生活の匂いのない言葉など使ってはいなかった。その意味では、サボリ敬語はむしろ喜ばしい傾向なのだろうか」とも述べています。

「日本語の乱れ」を嘆くオジサンとしての彼と、「完全なる平等」を目指す以上その論理的帰結として敬語はいずれ廃止するほかないと考える左翼としての彼とがせめぎ合っているようで興味深く感じます。

左翼的なのも道理で、著者は元朝日新聞編集委員(当然その前はヒラの記者を経験したはず)です。私がこの本をあまり好きになれない理由もそれなら、書いてあることに信頼を置く理由もそれです。思想的には相容れませんが、新聞編集の現場で揉まれてきた「技術」は伊達ではないと思うからです。

サヨク、サヨクと書きましたが、例文等からなんとなくそう感じられるというだけで、思想を押しつけるような内容ではありません。文章技術に関しては実に勉強になる本です。