間違っているのは先生だ

先日、かけ算の順序について書きました。今日はもう少し敷衍してみたいと思います。

私は基本的に順序強制に反対の立場です。しかし、教育の現場では順序にこだわった方が教えやすいということは理解できます。

かけ算の概念を教えるとき、最初は足し算の繰り返しから教えるはずです。例えば、饅頭を3つずつ5人に配る場合。

3 + 3 + 3 + 3 + 3 = 15

で、答えを求めます。そして、3 を 5 回足すかわりに

3 × 5 = 15

とするのだと教えます。3 + 3 + … を 5 回であって、 5 + 5 + … を 3 回ではありません。

ですから、生徒が教わったとおりに式を立てれば 3 × 5 = 15 になるはずで、 5 × 3 = 15 とはなりません。

考えてみると世の中にこういった「お約束」は数多くあります。自分の経験で言えば、自動車学校では二輪車に乗るときはまずスタンドを上げてから跨がるのだ、と教わりました。スタンドを上げ忘れて走り始めると非常に危険だからという理由です。

しかし、実際免許を取って路上に出てみると、皆、跨がってからスタンドを上げています。白バイでさえも。要するに、スタンドを上げ忘れさえしなければ順序はどうでも良いというのが本音なのですね。

話をかけ算の順序に戻すと、3 × 5 = 15 でも 5 × 3 = 15 でも良いということは、跨がってからスタンドを上げようがその逆だろうが構わないことに似ています。

ただ、似てはいますが、バイクのスタンドの上げ下げは交通という「社会のルール」であるのに対し、かけ算の順序は数学という「自然科学のルール」であるという点で決定的に異なります。

数学の世界では、先ほどの饅頭の計算を 5 × 3 = 15 とすることは正しいのですから、「1つぶんの数 × いくつ分 で式を立てましょうね」という教室内のお約束を優先するべきではありません。

せいぜい、口頭で注意する程度に留めるべきで、テストでバツを付けるなど論外です。

一番心配なのは、5 × 3 = 15 でバツをもらってきた子の親が、「お前は間違っていない、間違っているのは先生だ」と言うであろうことです。親の人情としては当然ですが、人生の早い時期に教師を侮ることを覚えるのは子供にとって大きな損害です。

やはり、かけ算の順序は強制すべきではありません。

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