借金が得になる場合

「お金は借りるものではない、借りると損」と常日頃言っていますがもちろん例外はあります。

  1. 安く借りて高く貸す場合
  2. 将来のインフレ率が借金の利率を上回る見込みがある場合
  3. 莫大な借金を可能とする信用力がある場合

の三つです。

1.は単純です。上は銀行から下は町金まで金融業は皆、低い金利で借りて高い金利で貸してサヤを取っているのはみなさんご存じの通りです。

2.も分かりやすい話で、インフレが進行しているときも借りた方が得です。私の周囲も「住宅ローンの返済がラクになるからインフレ賛成」という声で溢れています(笑)。ただ、その場合、貸す側もそれを見込んで高い金利を設定するので、実際に得をするのは困難です。

3.については古代ローマの権力者カエサルを例に以下で述べます。

借金王カエサル

歴史上カエサルを名乗る者は多く、また西洋では皇帝の異名でもありましたが、ここで言うカエサルはもちろんガイウス・ユリウス・カエサルです。

彼は貴公子的な性格で知られ、奢侈を好んだために若い時分から莫大な借金を作っていました。特にお金を使ったのが女性への贈り物だというのは興味深い話です。

また、ある時など海賊に囚われ、20タレントの身代金を要求されましたが、「20タレントでは安すぎる、50タレントにしろ」と逆につり上げたと言われます。1タレントは人一人の体重(約50kg)に相当する金と同じ価値で、本日(2014年8月24日)の金相場(1g=4,663円)から換算すると2億3315万円に相当します。時代によっても価値は変わりますが、50タレントはとにかくもの凄い額です。

カエサルは単に見栄で身代金をつり上げたわけではありません。その方が自分の命がより安全になると考えたのです。彼は家来を解放させ、その家来に金策させて身代金を作りました。もちろん全て借金です。

匹夫の手にかかって横死するよりは、莫大な身代金を払った方がマシと考えたわけです。

債務者の方が威張る

このように借金は膨らむ一方でしたが、最大の債権者はクラッスス(マルクス・リキニウス・クラッスス)という人物で、彼は第一回三頭政治の一頭でもありました。

普通に考えたら、金を貸しているクラッススの方が立場が上なようですが、彼らの関係は全く逆で、クラッススはカエサルの言いなりでした。というのも、カエサルは「ここで私が失脚したら、あなたは貸し金を回収できなくて困りますよね?」とクラッススを脅していたからです。

当時最も権力を持っていたのはポンペイウスで、カエサルは彼に対抗するために自分の言いなりになるクラッススを巻き込んだのです。

もうお分かりでしょう。「借金も財産の内」とは良く言ったもので、莫大な借金も、ある種の人々にとっては有利なカードとなります。

カエサルほどではなくても、人は「〇〇氏の負債が何億」と聞くと、「それだけ貸してくれる人がいるってだけで大したものだ」と思うものです。

ただし、こういった芸当ができるのはごく一部の才能に恵まれた人々だけで、我々凡人がやっても痛い目を見るのがオチです。

間違っても真似しようとしてはいけません。

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