21日の日経「波音」を読んでいて思わずのけぞりました。
ハイテクとローテク
ファイル交換ソフト「ウィニー」の開発者を逮捕するなどネット犯罪の捜査で知られる京都府警が、今度は国内で初めてコンピューターウイルスの作成者を特定、逮捕した。「捕まるはずがない」と思っていた容疑者を割り出したのは高度な解析技術だろう。しかし、激しい電脳戦の一方で、「ウイルスがネット上に放出されていた時間帯に何をしていたか」といったことを裏付けるため、容疑者に対する地道な尾行や行動監視が繰り返されていた。華やかに見えるハイテク捜査を、足で稼ぐ昔ながらのローテク捜査が支える。何故かほっとした気分になる。(坂)
いかにもネット社会の悪者「ウイルス作成者」を捕まえてお手柄という感じですが、この事件、実はウイルス作成ではなく「著作権侵害」容疑での逮捕なのです。で、何の著作権かと言えばアニメの静止画一枚なのだとか。確かに、一枚でも侵害は侵害です。捕まってしまったのは仕方ないようにも見える。どうせ悪い奴ですしね。
しかしながら、見渡すと、アニメの静止画などそこらじゅうのサイトに使われてます。彼らは逮捕されていません。キャプチャした画像をそのまま使うのはもちろん、自分で描いたものであっても厳密には違法となる(権利者から許諾を得ている場合は別。また、固有の創造性を持つものも別ですがまず認められない)のですが、「このくらいいいか」と思ってしまったり、よく知らなかったりで、特に自分で描いたものはほぼ問題なしという認識が大勢となっています。
また、権利者(ここではアニメ会社)の方でもいわゆるファンアートを一律に禁じてはかえってイメージダウンとなるとして、例えば(株)ガイナックスなどは「ファンが自分で描いたものはサイトに載せてよい」という方針を採っています。(ただし、ガイナのガイドラインをよく読むとエヴァンゲリオンとフリクリについてしか規定しておらず、他の作品、たとえばグレンラガンのイラストはどうなのかということははっきりしません。多分NG? って、もはやオタクにしかついて行けない話になってますね(笑))
さて、件の容疑者がウィニーで流したのはキャプチャしたものか自分で描いたものか、恐らくは前者でしょうが、いずれにしろ侵害の度合いはかなり軽微と言えます。交通違反で言えば、5キロオーバーで捕まえるようなものです。まぁ、違反は違反ですから一歩譲って捕まえるのは良いとして、「国内で初めてコンピューターウイルスの作成者を特定、逮捕した」と胸を張るのはちょっと違うんじゃないか、と。
何より驚かされるのは、いやしくも社会の木鐸たらんとする者がこのような明らかな別件逮捕を上記の引用のように賞賛していることです。ジャーナリストとしてどうなんでしょうね。ま、ブルジョア新聞だからかなぁ(笑)
最後に。私はウィニー使用者を擁護しているわけではないので誤解しないでくださいね。