昨日、相手方が全額弁済してくれました。これで、6月11日の訴状提出から3ヶ月に及んだ紛争も、完全に解決です。失いかけた金が戻ったというだけで、別に儲けたわけではありませんが、やはり嬉しいものですね。
淡々とやるべし
世の中には情熱を傾けてやるべき仕事と、淡々とビジネスライクに進めた方が良い仕事の2種類があります。少額訴訟は明らかに後者です。たかだか60万(私の場合は10万でした)やそこらの金で取り乱すのは人としてどうかと思いますし、頭に血が上ると思わぬ失敗をしてしまうからです。
今回の件にしても、前の記事を見て頂くと分かりますが、私自身、相手に対して憤慨するところ無きにしも非ずでした。しかし、憤慨しすぎて言ってはならないことを言ったり、やってはならないことをやってしまっては元も子もなくなります。例えば「ぶっ殺すぞてめぇ」などと口走る、相手の家に押しかけて口論の末、暴力をふるうなどですね。こんなことで三面記事を賑わすのはつまりません。
そこまで行かなくても、わずかな金のために自分の精神的リソースを大量に割り当てるのは賢明とは言えません。
ですから、まるで他人事のように淡々とやるのがベストです。
分からないことは書記官に聞く
簡裁の窓口の人は非常に愛想が良く、こちらとしても緊張せずに済んだのですが、担当になった書記官はちょっと声の調子が怖いというか、あんまり優しそうな感じではありませんでした。
これは想像ですが、裁判の当事者の中にはタチの悪いのも大勢居るわけで、下手に愛想良くして舐められてはいけないからだと思います。
もっとも、手続きに関して分からないことは書記官に聞けばなんでも教えてくれます。イメージ的には「怖いけど実は親切な先生」のような感じです。ただ、もし、筋の通らない要求をすればピシャッと撥ね返されるだろうと思います。そういう毅然とした雰囲気を感じました。
もし訴えられた場合は必ず答弁書を出す
面白いことに、裁判官は事件の内容を殆ど把握していないようでした。法廷で「あなたが請負った仕事の代金を請求するということですね?」と聞かれたので、「いいえ、私は仕事を依頼した方でして、相手方が仕事をしてくれないので、前払いした代金を返還して欲しいという請求です」と訂正すると、裁判官は苦笑していました。
要するに、被告は答弁書を出しておらず、期日にも欠席したので、原告の請求を全面的に認めるのはもう決定事項で、その際、請求原因は割とどうでも良いみたい(というか、書記官まかせ)なのです。
これは考えてみると恐ろしいことで、今回私は前払いした10万円を取り戻すだけで良しとしましたが、「50万円の損害が発生しているのでそれも賠償して欲しい」と言っていれば、それも通ったわけです。
このように、欠席裁判というのはとてつもなく不利ですから、もしあなたが少額訴訟の被告となることがあったら、少なくとも答弁書だけは出すことをお薦めします。
何事も経験
このブログで今回の裁判についての記事を読み返してみると、毎回のように「良い勉強になった」と書いています。これは自分で自分をなだめるために書いたことではありますが、10万円という大してプレッシャーを受けない金額で、訴訟の手続きを一通り経験できたのは本当に良かったと思います。
これが100万、1000万という金額だったら、果たして「淡々とビジネスライク」にできたでしょうか。絶対に無理ですよね。もちろん、その場合は弁護士に依頼するでしょうが、なんにせよ平常心を保つのは困難なはずです。
「カネ~、オレのカネ~、オレのあの1000万は、ど・こ・じゃ~」
と、亡者のように、あるいは餓鬼のように、夜な夜な呟き続けるかも知れません(笑)
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冒頭に書いたように、既にお金は返してもらいました。
相手方にもいろいろと事情があったようです。事業に失敗して資金繰りが苦しい時期だったようで、そんな時に私が「前払い」を持ちかけたものですから、スケジュール的にほぼ無理だったにも関わらず、つい仕事を受けてしまったのだと思います。
こちらからの連絡に応じなくなったのも、「会わせる顔がない」からでしょう。本当に悪い奴なら、5分で作ったような手抜きのデザインを平気で納品するはずです。
なので、気持ちの上でもこの一件はすっかり水に流すつもりです。
ただ、一連の記事の中に、相手に対して礼を失するかもしれない表現(「けしからん」など)がありますが、これらはあくまでその時点での私の偽らざる心情ですから、そのままにしておきます。