先日、Winnyを使用してウィルスを流していた大学院生が逮捕された事件について少し書きましたが、結論としては、静止画1枚の著作権侵害で捕まえるのはいかがなものか、ということでした。
ただ、警察の名誉のために言っておきますと、これは決して警察内部の点数稼ぎでもなければ見せしめ逮捕でもない(と思う)のですね。もちろん、このケースは明らかな別件逮捕に当たりますので、刑事訴訟法上の問題を抱えているのは確かです。恐らく、その点を鋭く突かれると有罪に出来ないことも考えられます。
が、そのことはひとまずおいて、今日は一般論として「捕まえやすい奴を捕まえる」・「目立っている奴を捕まえる」というのは警察のやり方としては必ずしも間違っていないということを論じようと思います。
交通違反の取締りなどを考えると分かりやすいのですが、割と「捕まりにくいコツ」みたいなのがあって、例えばネズミ取りをやってる所はしょっちゅうやってますし、飲酒検問なども「今夜当たりやってそうだな」と思うと案の定やってますよね。で、毎回要領の悪い人が捕まる、と。捕まった人に言わせると「オレより悪質な奴がいっぱいいるだろ! なんでそいつらを捕まえずにオレを捕まえるんだ!」ということになるわけですが、警察としては「悪質な順に捕まえる」というのは不可能ではないにしても非常に困難です。もし、どうしても悪質な順に捕まえろというのならもっと人員・予算が必要になる。つまり、「捕まえやすい奴を捕まえる」というのは限られたコストで最大限の効果を上げるためにある程度有効な方法なのですね。つい、コストを増やさずに各員の努力で対処しろ! と言いたくなってしまいますが、このような旧日本軍的精神主義は現代人の気質に合わないので、まずうまくいきません。それに、努力によって吸収できる幅には限りがありますしね。
結局、費用対効果を考えると一罰百戒も已むを得ないといったところですが、これには二つ問題があります。まず一つ。聞くところによると、インパラの群れは近くにライオンが来ても大して恐れる気色を見せないそうです。何故かというと、ライオンに食われるのは最も弱い個体一匹だけなので、皆自分だけは大丈夫と高をくくっているのです。これと同じことが犯罪者にも起きるのではないかと思うわけです。(インパラに失礼ですね。すみません)
もう一つは言うまでもなく不公平感を招きやすいということです。
まぁ、そんなことは警察もよく分かっている、否、一番よく知っている筈で、彼らは常に一罰百戒主義と天網恢々主義の間で最も効率の良いポイントを見極めようとしていることでしょう。
それにしても、正直者が馬鹿を見ることが多い世の中、警察にはしっかりやって頂きたいものです。