近頃怪しからぬ話を聞きました。郷里の駅前に立派なマンションが建ったそうで、そのオーナーが筆者の小学校5,6年の時の担任の先生なのだそうです。
それ自体は結構なことなのですが、この話を聞いて、脳裏にある光景が浮かぶとともに、何とも知れない失望の念が湧いてきました。
終業前のホームルームでのこと。その先生が、明日は学校はお休みだと言うのです。我々生徒は大喜びしたものです。ただ、祝日でもないのになぜ休みなのかは子供心に不思議でした。……実は教員のストライキだったのです。
ご存じの通り、国家公務員法(98条)及び地方公務員法(37条)により公務員のストライキは禁止されています。法律を破ってストライキを行うことに多少の後ろめたさがあったのでしょう。先生は小学生に向かって、労働基本権の講釈を始めました。
大方、ストライキ権は原則として全ての労働者に認められるべきなのだが、日本の法律は不当に公務員のそれを制限している。しかし、ILO(国際労働機関)では、公務員にもストライキ権を認めるべきとしており、日本の国内法よりも国際機関の見解の方が優越するのであるから、我々がストライキをするのは正当である、とかいう話でした。
いかがでしょう。小学生相手にですよ。ちょっとした教室内プロパガンダです。
彼の主張には二つの誤りがあります。一つは、公務員のストライキを制限しているのは確かに国家公務員法と地方公務員法の二つの法律ですが、これらは、憲法15条に「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて」とあることに由来しているのであって、公務員のストライキは、単に法律違反であるに留まらず、憲法違反である、ということ。
そしてもう一つは、国際条約(この場合、国際人権規約)と国内法、及び憲法の上下関係については諸説あるものの、条約が常に憲法に優位するとする説は稀で、両者は対等、もしくは憲法が条約に優位するというのが通説である、ということです。ましてや、公務員には憲法尊重擁護義務(憲法99条)があり、都合の良い時だけILOなどの国連機関を持ち出すのは筋が通りません。彼ら(日教組)は、例えば9条関連などでは、憲法を絶対に護持すべき大層なものとして扱うくせに、こと自分たちの給料をつり上げようという段になると、憲法に優越する価値を認めないことを誓った上で公務員となったことを忘れてしまうのは、奇妙なことです。
公務員のストライキと民間のストライキは、質的に大きな相違があります。民間では自分たちの給料は自分たちが稼ぐのです。ストライキをしている間は当然利益があがらず、下手をすれば会社が潰れて、元も子もなくなってしまう。そういうリスクを負いながら、まさに身を削って交渉しているわけです。
一方、公務員は税金で食っています。いくらストライキをしても税収が増えたり減ったりするわけではない(税務署は別ですが)ので、痛くもかゆくもない。ストの期間中の給料は受け取らない(まぁ、普通そうでしょう)としても、終われば元の仕事に戻るだけです。もし、解雇でもしようものなら、全国から「闘士」が集まってきて「不当解雇を許すなー」と叫んだりして大騒ぎになります。
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さて、件の先生です。彼が建てたそのマンションは、駅前の一等地に数十階建て、優に数十億円はかかったろうとのことです。筆者が小学生だったのはもう30年近く前の話ですから、もう退職されていると思いますが、まさか退職金で建てたわけではないでしょう。宝くじに当たったとしても無理です。彼の両親が資産家で、マンションは相続税対策かなにかのために建てた、と見るのが妥当でしょう。つまり、彼は、教壇で「ILOではスト権が認められている」とかなんとか講釈していたときから既に、お金持ちのぼんぼんだったわけです。
にもかかわらず、「もっと給料をよこせ」と、生徒をほったらかしてストライキに参加していたのです。(もっとも、厳密には待遇改善ではなく、いわゆるスト権ストだったかも知れませんが。この辺、なにぶん子供だったので詳しいことは覚えていません)
当時は学校が休みになる、と喜んだ教員ストですが、振り返ってみると、金持ちに対する嫉妬を差し引いても、実に怪しからぬ事です。
それにしても、そんなぼんぼんが、労働者の団結権がどうの、と一丁前の闘士ヅラして語っていたとは。
呆れると同時に、その先生を別段嫌いでもなかったことを思い出して、なんとも寂しい気持ちになってしまいました。
突然のコメント失礼致します。
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をやっていてリンクを増やす苦労はよく分かるので、このコメントは残しておきますね。