黒子のバスケ脅迫犯の気持ち悪さ

漫画「黒子のバスケ」の原作者及び関係各所を脅迫した事件の被告人意見陳述の全文が公開されています。

なるほど、渡辺被告の知能は平均以上ではあるのでしょう。しかし、それほど賢いとも思えません。ある部分では「ろくに努力もせず怠けて過ごして来た」と認めているにもかかわらず、

自分の人生と犯行動機を身も蓋もなく客観的に表現しますと「10代20代をろくに努力もせず怠けて過ごして生きて来たバカが、30代にして『人生オワタ』 状態になっていることに気がついて発狂し、

別の部分では格差社会を嘆いたりしています。

グローバル経済体制の拡大により、一億総中流の意識が崩壊し、国民の間の格差が明確化して久しい昨今です。日本は東西冷戦下の高度成長期のようなケインズ型の経済政策を採用する体制にはもう戻れないでしょう。

「グローバル経済」だの「ケインズ型の経済政策」だのといった「ご高説」に失笑させられるのはさておき、上に引用した2つの文は論理的に矛盾しています。

「ろくに努力もせず怠けて過ごして来た」のならば、現在の不遇もまさに「身から出た錆」であり、「格差社会」を嘆く筋合いはないはずです。

「こんなにも努力してきた」のに「格差社会」のせいで不遇、ならば筋は通りますが。

高い自意識

渡辺被告に限らず、自分がいかに努力していないかを力説する人間はたくさんいます。「自分は本当は高い能力があるんだけど、努力していないからこの程度なんだ」というわけです。

渡辺被告の高い自意識は、臨床心理士から「間違った」プロファイリングをされたことを憤る部分にも垣間見られます。

どこかの臨床心理士が新聞紙上で「好きなキャラ云々」などと真相にかすりもしないプロファイリングを披露して悦に入ってましたが、そんなしょぼい話ではないのです。

この後の文でも、件の臨床心理士を「自身の能力への懐疑と謙虚さが完全に欠如した恥の上塗り的な強弁を平然と新聞紙上にできる人物」などと強く非難しています。

この男、事ここに至ってもまだ「自分のことを正しく理解して欲しい」ようなのです。

自殺をお預けにされる期間?

自分は下されるであろう実刑判決の量刑の長さを「自殺権を剥奪され、自殺をお預けにされる期間」と理解します。

そして、一番情けないのが、ことあるごとに自殺を口にしている点です。そんなに死にたいなら脅迫行為などせずにさっさと死んでおけば良かったのです。それを「本当は死にたいんだけど、自殺をお預けにされている」などと、よく言ったものです。

そもそも、被害を弁償せずに「自殺」によって責任を取りたいというのもふざけた話です。

「年収が200万円を超えたことは一度も」なく、全額支払うのは無理だからというのがその理由ですが、逆に言えば、必死になって働けば少なくとも一部は弁償できるのです。

それをせずに自殺など、許されることではありません。

どうも渡辺被告は、自分が社会に受け入れられなかったのは「顔がブサイク」で「学歴がない」からだと思っているようです。

しかし、現実は違います。世間の人は他人の、しかも男の顔などには大して注意を払っていません。学歴も然り。

彼の周囲が冷淡であったとすれば、その理由は「彼が自分のことをやたら大層なものと思っていて気持ち悪いから」に相違ありません。「刑期を終えたら自殺する」とか、「(プロファイリングに対して)そんなしょぼい話ではない」とかいった発言は、渡辺被告がいかに自分のことをスゴい人間だと思っているかの証左です。

彼の場合、平均より頭が良いだけに、「本当のオレはこんなものではない」という気持ちも、それだけ強かったのでしょう。

このように、空想上の自己像と現実の惨めな自分との乖離に苦しむ人間が増えています。これこそ、単なる経済的な格差より数等深刻な、現代の病理と言えましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*