言葉は絶えず変化していくものです。
外来語、借用語による変化のようにいわば外からもたらされる変化もありますが、内からの変化も頻繁に起こります。
一つには、その言葉が意味する物・事が社会から消え去り、同時に言葉も消える現象があります。例えば「印籠」はテレビの時代劇ではおなじみでも、実際日常的に使っている人はいないでしょうし、死語に近いと言えます。
もう一つ、同じ言葉がべつの物を指すようになることもあります。例えば「車(くるま)」と言えば、近世までは貴人の乗る牛車(ぎっしゃ)のことでしたが、明治期から戦前にかけては人力車のことであり、現在は言うまでもなく自動車のことです。
また、言葉は論理のみによって決まるわけではなく、もっと民衆の生活に密着したものです。現在、単に「携帯」と言えば「携帯電話」のことであり、決して携帯コンロや携帯寝袋のことではあり得ません。要するに庶民の感覚では電話が携帯するものとして一番なじみ深いわけですね。
余談ですが、最近タッチパネル付きの多機能携帯電話をスマートフォン、略してスマホと呼び、従来の携帯電話と区別するのが普通です。これなどはマーケティングの都合で従来品と差別化するために作られた言葉が一般に浸透した例と言えるでしょう。
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最後に、社会の変化に伴って今までなかった新しい言葉が生まれる現象です。言葉の変化として真っ先に思い浮かぶのはこれかもしれません。
最近見かけて興味深く思った新しい言葉に「肉肉しい」というのがあります。用例としては、
チャーシューが少し硬いが、肉肉しくて良い感じ
など(笑) 主としてB級グルメ用語です。
日本古来の「にく」という和語を重ねて形容詞としたもので、肉食がこれだけ普及しているのに今までなかったのが不思議な言葉です。肉肉しく・肉肉し・肉肉しき・肉肉しけれ・〇。シク活用ですね。
「憎々しい」と紛らわしいからでしょうか、残念ながら、まだ辞書には載っていないようです。