以前は普通に使われていた言葉が、現在では「不適切」とされる現象はよく見られます。例えば、「釣りキチ三平」のように漫画のタイトルにもなった「〇〇キチ」。「キチガイ」みたいに〇〇が好きという意味ですが、今ではまったく見かけません。
と言うことは、現在普通に使われている言葉も将来問題とされて消えていく可能性があります。
ハイブリッド
消えそうな言葉の筆頭が「ハイブリッド」です。この言葉、日本では「ハイブリッド・カー」のイメージが強く、語感としては悪くありませんが、本来の意味は「雑種」です。
小説「ハリー・ポッター」シリーズで、「人間」と「魔法使い」との混血を「汚れた血(mud-blood)」と呼ぶことが最低の行為として描かれていることからも分かるとおり、西欧では純血主義に対する拒否感が強まっています。それに従って「ハイブリッド」という言葉も使いにくくなっています。
余談ですが、先日購入した新しいMac、SSD と HDD の長所を組み合わせたという”Fusion Drive”が搭載されています。”Fusion(融合)”という言葉を使ったのは、”Hybrid”を避けるためだと思います。
マニア
冒頭の「〇〇キチ」が「〇〇キチガイ」の略だからダメということになって、言い換えとして広まったのが「マニア」です。「釣りマニア」「鉄道マニア」、「オーディオマニア」などなど。
しかし、カタカナなので語感が弱められているとは言え、maniac とは躁病患者のことであって、かなり危なっかしい表現です。
一部で -mania を避けて -phile という接尾語を使う(オーディオマニア→オーディオファイル)ようになっていますが、普及しているとは言いがたい状況です。
まあ、「鉄道ファン」「オーディオファン」あたりが無難でしょう。
ニート
Not in Education, Employment or Training. NEET. もともとは、イギリスの政府機関「社会的排除防止局」が文字通り社会からの排除を防ぐために定義した言葉です。しかし、日本では侮蔑と嘲笑とともに用いられ、むしろ排除を進めるための言葉でもあるかのようです。
社会からの脱落者という意味では、「乞食」という言葉があります。乞食(こつじき)は本来は僧侶の修行の一つですが、次第に差別的な意味が加わり、現在では少なくとも人をコジキ呼ばわりすることはためらわれます。
「ニート」もそのうち差別語として問題化されそうです。