最近、「日本の家電業界は過剰品質に陥っている」と説く論者が多く居ます。
韓国など新興国のメーカーは、もっとも購買意欲が旺盛だと言われる、中国・インドに住んでいて月収およそ8万円以下の人々(ボリュームゾーン)をターゲットに良いビジネスをしています。
それにひきかえ、日本の家電メーカーは「月収8万? そんな貧乏人を相手に出来るか!」と言わんばかりの殿様商売で、利益を減らしています。
この現象だけを見ると、日本のメーカーも、技術開発などやめて、低価格で勝負したほうが良いようにも思えます。
しかし、それこそ近視眼的な愚策に他なりません。
なるほど、今は中国・インドなどに月収8万以下の人々が大量にいます。しかし、彼らはずっと月収8万以下なのでしょうか。そのうち、10万、15万、20万となってくるのではないでしょうか。そして、そうなっても相変わらず「安かろう悪かろう」の製品を買い続けるでしょうか。
おそらく、今我々が使っているような高品質な製品を望むようになるはずです。確かに、中国にGDPで追い抜かれるのは心情としては悲しい。しかし、それは「高品質」が武器の日本メーカーにとって巨大なチャンスでもあるのです。
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古い話ですが、1929年、アメリカのフーヴァー大統領は就任演説において「このアメリカの好況は永遠に続くであろう」と高らかに宣言しました。ところがその年の10月、かの世界恐慌が起きるのです。先のことは分からないものです。
また、昭和の末のバブル景気を経験された方は、あの時代の空気をよく覚えていらっしゃるでしょう。そう、あの好景気が永遠に続くように感じたものです。しかし、そうはなりませんでした。
今の不景気も同じ事です。まぁ、ちょっと長いことは長いですが、永遠に続くことはありません。特に若い人は物心ついたときから不況なので、日本の将来に希望が持てないようですが、交互に好況不況が訪れるのは資本主義の宿命であり、好景気は必ずまたやってきます。この点は強調したいところです。
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実は筆者も、とある家電メーカーに勤める身です。残念ながら、会社の長期戦略に参与するような役職ではありませんが、技術者として、「お前らの製品は過剰品質だ」と言われては、心穏やかならぬものがあります。
現在の世界的需要に対応するために、一時的に低価格戦略をとるのは仕方のないことですが、技術的アドバンテージは決して失ってはならない、否、ますます強化していくべき、と考えます。
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上に述べたとおり、中国がお金持ちになるということは、日本製品の強みが生かせるということです。インドもそうです。
今は苦しいときですが、なんとか耐え抜けば、日本の未来は明るいのです。
七種は乙女の摘むと聞きにけり