恐怖政治の哲学

最近ラーメンに凝ってます。
これはそのラーメン屋で聞くともなしに聞いた話。

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その日、行きつけの店はわりとすいていて、ちょうど食べ始めたところでした。作業着姿のあんちゃんが二人、私から椅子二つほど離れてカウンター席に座りました。大衆食堂ではありがちですが、二人は大声で話していて、イヤでも内容が聞こえてしまいます。

先輩:「レギュレータのとこに 11V しかきとらんっちゃね」
後輩:「少し低いですね」
先輩:「そうやろ」

なるほど。この会話で、彼らが自動車の修理工であることがわかります。

後輩:「ところで、山本さん(仮名)のとこは、どげんでしょうね」
先輩:「ああ、やっぱ大変のごたるね。ガラスとかうちやったら4万ぐらいで仕入れよろうが」
後輩:「そうですね」
先輩:「それを、うちの社長が『山本のとこに卸すんなら、おたくからは買わん』って言って圧力かけて、売らせんげな」
後輩:「…………」
先輩:「定価やったら12万とかするけん、話にならんもんなぁ」

どうやら、山本さんという人は彼らの工場から独立した人で、前の雇い主から意地悪をされているようです。

ここから先は私の想像ですが、「社長」が「山本さん」を潰しにかかっているのは、単に商売がたきになったからというだけではありません。自分に逆らった人間に対する徹底的な復讐を、現従業員に見せつけることによって、新たな造反の芽を摘もうとしているのです。

先輩:「だけん、おそろしゅうて誰も自分の工場持とうやら思わんちゃ」
後輩:「そうですね……」

その証拠に、私の側でラーメンを啜っている若者二人には、社長に逆らっても無駄という無力感が漂っています。

人から好かれるのではなく、嫌われることによって世渡りしようという人もいるということを以前にも書きました。こういう人にはあまり関わりたくないものですが、不運にして関わってしまったら……

できるだけ、従順なフリをして逆に利用することを考えましょう。それが一番の策です。

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