アイスケーキだとどうなる

明けましておめでとうございます。

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© Gelato Gelato

去年の暮れに書いた、ケーキの切り方と公平の観念の続きです。
あの記事では、「分けるのに時間をかけすぎると、ケーキが劣化してしまう」と書きましたが、頗る観念的で、現実味の乏しい話でした。例え1時間かけたとしても、普通のケーキはそのくらいでは劣化しませんよね。

ですが、アイスケーキだとどうでしょう。
これだと、「交渉にかかる時間」を、無視しがたいコストとして認識できると思います。

このアイスケーキ、n 分後には溶けてしまうものとします。
あなたは、利己的な実業家のA氏とケーキを取り合っています(笑)。じゃんけんで勝った方がまず希望する取り分を提示し、相手が承諾すればその通りに分け、拒否すれば、今度は相手が取り分を提示します。1回の交渉には1分かかるものとします。提示できる取り分は n を超えない整数分の 1 です。両者が自分の取り分が最も多くなるように行動したとすると、

まず、n = 1 の場合、
先手が、取り分 1 (全部)を提示し、後手が拒否して終わるでしょう。 アイスケーキは溶けて無くなってしまいます。この場合、交渉のコストは100%で、両者の取り分はゼロになってしまいます。(まぁ、しかし、1分で溶けるケーキというのも無理がありますね)

n = 2 の場合、
先手が仮に 1 を提示すると、後手は必ず拒否するので、2回目の提示で今度は後手から 1 / 2 を提示され、この場合、拒否しようと応諾しようと先手の取り分はゼロになってしまいますから、1 を提示するのは誤りです。結局、先手は最初から 1 / 2 を提示し、後手が応諾して、仲良く半分こすることになります。

n = 3 の場合、
先手が仮に 1 を提示すると、後手は必ず拒否し、2回目の提示で後手から 1 / 3 を提示されることになるでしょう。なぜなら、1回目の提示でケーキはすでに 2 / 3 に減っており、残り2分、すなわち交渉回数2回ということは、n = 2 の場合と同じ事になるので、( 2 / 3 ) * ( 1 / 2 ) = 1 / 3 を提示せざるを得ないからです。
結局、先手はこれを先読みして、最初から 2 / 3 を提示し、後手が応諾することになります。

n = 4 以上の場合も同様に、先手が仮に 1 を提示すると n – 1 の場合と同じになることから、両者が十分に賢ければ、n が偶数の時は文字通り半分こ、奇数の時は、先手が ( n + 1 ) / ( 2 * n ) を提示し、後手が応じる( 取り分は ( n – 1 ) / ( 2 * n ) )ことで決着します。

n が奇数の時は、先手が 1 / n だけ得することになりますが、n が十分に大きければ、結局、正解は、「最初から半分こ」に限りなく近くなる、というわけですね。

 

参考文献: Avinash K. Dixit, Barry J. Nalebuf
The Art of Strategy: A Game Theorist’s Guide to Success in Business and Life

「アイスケーキだとどうなる」への2件のフィードバック

  1. 10月の記事に拝見しました。
    Windows7のマウススクロールパッチを頂きました。
    大変助かりました。
    本当にありがとうございます。
    何とかならないのかとググりまくった末に
    たどり着きました。
    ご丁寧にパッチまでアップされており
    ものすごく本当に助かりました><;
    重ね重ねありがとうございました。。。

  2. 通りすがりさん:
    いえいえ、お役に立てたようでなによりです。
    自分用に作ったパッチでしたが、やはり同じ症状の人がいたんだと思うと少し嬉しいです(^^;

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